なかなか治らない帯状疱疹の痛みとブロック治療

帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)の原因ウイルスが再活性化して起こる病気です。発疹やかさぶたは数週間で治まりますが、その後も発疹が治ったあとも、「ピリピリ」「ズキズキ」とした神経の痛みだけが残ることがあり、これを帯状疱疹後神経痛(Postherpetic Neuralgia:PHN)と呼びます。今回、PHNとその対処法としての神経ブロック注射について解説します。

基本治療は?

急性期には抗ウイルス薬、鎮痛薬、場合により神経障害性疼痛に有効な内服薬(ガバペンチンやプレガバリン、三環系抗うつ薬)やリドカイン貼付剤を用います。しかし、こうした治療を受けても痛みが長引いてしまう方がいます。
 
今、注目されている治療が「神経ブロック注射」です。これは痛みの原因となっている神経の近くに、局所麻酔薬やステロイド薬などを注入し、一時的に神経の興奮を抑える治療法です。 急性期(発疹が出てから2週間以内)に神経ブロックを行うと、痛みの緩和だけでなく、PHNへの移行を防ぐ効果も報告されています。特に高齢の方や、痛みが強い方には有効とされています。
ブロック治療の役割
帯状疱疹後神経痛の痛みは「神経が過敏になり、痛みの信号が過剰に出続ける」ことで起こります。薬だけでは十分に抑えきれない場合、神経や交感神経の働きを直接コントロールするブロック治療が有効となります。
 
代表的なブロック治療

1. 硬膜外ブロック
• 背骨の神経の出口(硬膜外腔)に局所麻酔薬やステロイドを注入し、痛みの伝達を遮断します。
• 急性期の強い痛みを和らげ、PHNへの移行を防ぐ効果も報告されています。

2. 神経根ブロック
• 帯状疱疹が出た部位の神経根をピンポイントで狙う方法です。
• 局所の強い痛みに有効で、繰り返し行うことで神経の過敏性を落ち着かせます。

3. 星状神経節ブロック(SGB)
• 首の交感神経の集まりを狙う注射で、特に顔や上肢に発症した帯状疱疹に有効です。
• 血流改善と交感神経抑制により、痛みやしびれをやわらげます。
• 顔面の帯状疱疹(眼・耳の合併症リスク)では早期からのSGBが推奨されることがあります。

4. 肋間神経ブロック
• 胸部に出た帯状疱疹後の痛みに有効で、咳や呼吸で痛む場合のQOL改善に役立ちます。

5. 硬膜外カテーテル持続投与
• 重症例ではカテーテルを留置し、数日間持続的に薬液を投与することで痛みを安定させます。
ブロック治療のメリットと限界
神経ブロック注射は、
  • 痛みを素早く軽減できる
  • 睡眠や生活の質を改善できる
  • 薬の副作用を減らせる などのメリットがあります。
しかし、効果は個人差があり、複数回の施術が必要なこともあります。
帯状疱疹の症状を軽くするには、ワクチンという予防法があります

帯状疱疹は、かつて水ぼうそうにかかったことのある人なら誰でも発症する可能性のある病気です。加齢やストレス、病気などで免疫力が低下すると、体内に潜んでいたウイルスが再活性化し、帯状疱疹として現れます。

つらい症状を防ぐために有効なのが、「帯状疱疹ワクチン」です。50歳以上の方を対象に接種が推奨されており、発症リスクの軽減だけでなく、万が一発症した場合でも症状を軽く抑えることが期待できます。

現在、日本で使われているワクチンには、生ワクチンと不活化ワクチン(シングリックス)の2種類があります。特に不活化ワクチンは、より高い予防効果があり、免疫力が低下している方でも接種が可能です(2回接種)。

メリット
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まとめ

「発疹は治ったのに痛みだけが残ってつらい」──帯状疱疹後神経痛は、本人にしか分からない大きな苦しみを伴います。

ペインクリニックでは、薬だけに頼らず、ブロック注射などの専門的治療を組み合わせて、痛みの緩和を目指すことが可能です。早期に適切な治療を行うことで、「何年も痛みに苦しむ」というQOL悪化のリスクを減らすことができます。

解説

一般社団法人ペインケア 理事長 柿沼 勇太(かきぬま ゆうた)

麻酔科専門医、公衆衛生学修士。慶應義塾大学医学部を卒業後、大学病院や市立病院で15年以上にわたり麻酔科に従事し、疼痛緩和や気道管理を専門としてきた。痛みや睡眠障害、排泄の問題は生活の質(QOL)を大きく損なうことを実感し、日常の不調に対する予防的アプローチとセルフケアを推進している。