腰痛とペインクリニックの役割 ― 治療法と生活習慣の改善で根本から向き合う

腰痛は、日本人の約8割が一生のうちに経験するとされる国民的な症状です。厚生労働省の調査(国民生活基礎調査 2019)では、自覚症状のある病気やけがの第1位が腰痛であり、その患者数は年々増加しています。単なる「疲れ」や「加齢現象」として放置すると慢性化し、生活の質を大きく損なうだけでなく、就労や社会生活への影響も深刻です。

基本治療は?

腰痛を訴えて来院する患者さんに対しては、まず整形外科や内科などで原因を明らかにすることが大切です。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった整形外科的疾患はもちろん、大動脈瘤や尿路結石、悪性腫瘍の骨転移といった内科的疾患が腰痛として現れることもあります。そのため、ペインクリニック単独で治療を開始するのではなく、画像検査や採血を含めた精査・他科との連携が必須です。

そのうえで、構造的な異常や危険な疾患が否定された場合に、痛みの緩和や生活の質改善を目的としてペインクリニックの専門的治療が力を発揮します。
腰痛の主な原因
腰痛と一口にいっても、その原因は多様です。代表的なものを整理します。

1. 筋・筋膜性腰痛
長時間のデスクワークや不自然な姿勢、運動不足による筋肉疲労。急性腰痛(ぎっくり腰)も含まれます。
2. 腰椎椎間板ヘルニア
椎間板が突出して神経を圧迫。下肢のしびれや坐骨神経痛を伴うことが多い。
3. 腰部脊柱管狭窄症
高齢者に多く、歩行時に下肢のしびれや間欠跛行を生じます。
4. 変形性腰椎症
椎間板や椎間関節の変性による慢性的な腰痛。
5. 圧迫骨折(骨粗鬆症関連)
特に高齢女性に多く、軽微な外力で骨折。
6. 内科的疾患による腰痛
腎結石、大動脈瘤、膵炎、悪性腫瘍の骨転移など。腰痛の背景に重大な疾患が隠れていることもあるため、注意が必要です。

このように腰痛の原因は多岐にわたるため、整形外科的評価(X線・MRI)や内科的評価を行ったうえで、ペインクリニックでの治療に移行するのが望ましい流れです。
ペインクリニックでの腰痛治療
ペインクリニックでは、器質的疾患が否定または治療済みであることを前提に、痛みの緩和を目的とした治療を行います。特徴的なのは神経ブロック療法を中心とする治療です。

1. 神経ブロック療法
• 硬膜外ブロック:広範囲の腰痛や下肢痛に有効。
• 神経根ブロック:特定の神経に直接注射し、坐骨神経痛に適応。
• 椎間関節ブロック:腰椎関節の炎症に効果。
• 仙骨裂孔ブロック:慢性的な腰痛に応用。

単なる鎮痛ではなく、炎症を抑え、血流を改善し、悪循環を断ち切る効果があります。

2. 薬物療法
• 鎮痛薬(NSAIDs、アセトアミノフェン)
• 筋弛緩薬
• 神経障害性疼痛に抗うつ薬や抗てんかん薬
• 弱オピオイド(必要時)

3. リハビリ・運動療法

体幹・骨盤底筋を中心とした運動療法で再発予防を図ります。

4. 物理療法・補助療法

低出力レーザー、温熱療法、装具(コルセット)などを併用。
生活上の注意点

腰痛の改善には生活習慣の見直しも欠かせません。
• 姿勢改善:長時間の前かがみ・猫背を避ける。
• 適度な運動:ウォーキングやストレッチ、骨盤底筋トレーニング(例:キュットレ)を習慣化。
• 冷え予防:血流を保つため腰や下半身を冷やさない。
• 体重管理:肥満は腰への大きな負担。
• 睡眠環境の整備:硬さの合ったマットレスを選ぶ。

メリット
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まとめ

腰痛は、多くの人が経験する症状ですが、その背景には整形外科疾患や内科疾患が隠れている場合もあります。まずは原因をしっかり調べることが大前提であり、そのうえで「痛みそのもの」を和らげる専門治療を担うのがペインクリニックです。

神経ブロック、薬物療法、リハビリ、生活指導を組み合わせることで、腰痛の慢性化を防ぎ、生活の質を高めることが可能です。秋冬は冷えで腰痛が悪化しやすいため、早めの受診と生活習慣の改善が何よりの予防策となります。

解説

一般社団法人ペインケア 理事長 柿沼 勇太(かきぬま ゆうた)

麻酔科専門医、公衆衛生学修士。慶應義塾大学医学部を卒業後、大学病院や市立病院で15年以上にわたり麻酔科に従事し、疼痛緩和や気道管理を専門としてきた。痛みや睡眠障害、排泄の問題は生活の質(QOL)を大きく損なうことを実感し、日常の不調に対する予防的アプローチとセルフケアを推進している。