厚生労働省の調査では、がん疼痛に神経ブロックが実施された割合はわずか2.9%(2020年度報告)と、欧米に比べて活用が進んでいません(厚生労働省, 2020)。新しい選択肢として再考することが望まれます。がんによる痛みは、身体的苦痛にとどまらず、患者の人生そのものに深い影響を与えます。腫瘍内科・緩和ケア外来・ペインクリニックの密な連携により、「その人らしい時間」を守る医療が実現します。痛みの少ない日々は、残された時間の質を大きく変えるからです。
一般社団法人ペインケア 理事長 柿沼 勇太(かきぬま ゆうた)
麻酔科専門医、公衆衛生学修士。慶應義塾大学医学部を卒業後、大学病院や市立病院で15年以上にわたり麻酔科に従事し、疼痛緩和や気道管理を専門としてきた。痛みや睡眠障害、排泄の問題は生活の質(QOL)を大きく損なうことを実感し、日常の不調に対する予防的アプローチとセルフケアを推進している。